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コラム/近況報告
掲載日: 近況報告

タイトル欠陥住宅全国ネット大阪大会に行ってきました(2)

 宅地造成不良(㋔)の問題は、東日本大震災で宅地の大規模崩落・建物不同沈下被害を生じた事件との関連で取り上げられました。その事件の一審判決は、宅地造成不良について造成業者の責任を認めたものの、不法行為責任の除斥期間(不法行為時から20年)が経過しているとして、造成業者に対する請求を棄却したそうです。
 しかし、建物や宅地の重大な欠陥は、大規模災害によって顕在化するケースが多く、その段階では建物建築や宅地造成から20年以上経過しているというのはままあることです。特に、宅地造成は建物建築時よりかなり古い時期に行われていることも多いので、不法行為の除斥期間の規定を厳格に運用する限り、欠陥のある宅地造成を行った造成業者はほとんどが免責され、被害者は救済を受けられないという不当な結果になります。この事件は現在控訴審に係属中で、除斥期間の問題について松本教授の意見書が提出されているそうですが、判決に注目したいと思います。

 リフォーム被害(㋕)には、詐欺的リフォーム(無料点検やモニター工事を口実とした訪問勧誘により、「床下が腐っている」などと虚偽の事実を告げて実際には不要な工事の契約をさせ、多額の代金を支払わせるもの)、破壊的リフォーム(専門知識不足やずさんな工事によって、構造耐力上重要な柱や耐力壁を取り除いたりして建物の安全性を損なうもの)、約定違反型リフォーム(注文した内容の工事を行わない、頼んでいない工事を行うなど)などがあります。
 こうしたリフォーム被害は、建物新築工事の場合に比べてリフォーム工事に関する法的規制が乏しいことが大きな原因です。建設業法は建設業を許可制としていますが、500万円未満の工事しか手掛けない業者はその対象外となるため、専任技術者(建設業法7条2号)等を置く必要もないなど、建築工事従事者としてふさわしい知識や技術に関する制度的な担保がありません。そのため、技術力に乏しい業者や、詐欺・悪質業者も参入フリーです。
 また、見積書や契約書の作成義務(同法19条、20条)なども課せられていないことがトラブルの要因となります。加えて、軽微なリフォーム工事は、建物新築工事や大規模修繕工事のような建築確認制度の対象ともならず、工事に行政のチェック機能が全く働きません。国が、リフォーム工事に通常の建築工事と同様の法的規制を課すなりして、早く被害防止に動けばいいのにと以前から思っています。

 熊本地震被害報告では、ふくおかネット所属の建築士さんが作成したスライドを基に、ネットのドン的弁護士が益城町の被害を中心とした報告を行いました。
 また、被災建物の無償調査等、ふくおかネットの取り組みについてもご紹介し、カンパを募りました。カンパにご協力くださった全国ネットメンバーの皆様、本当にありがとうございました。

 大会2日目は、引き続き「欠陥住宅訴訟にとっての残された問題」として、㋖裁判の原告・被告に関する問題、㋗追加・変更工事に関する諸問題、㋘大臣認定偽装問題、㋙住宅瑕疵担保履行法関連の問題、㋚建築生産システムの見直し・住宅検査官制度創設の必要性、㋛住宅安全基本法制定の必要性といったテーマを、各地の弁護士の方が解説されました。
 追加・変更工事に関するトラブル(㋗)は、実務上よくみられる紛争です。工事で当初の予定と異なる施工がなされた場合にそれが追加・変更工事にあたるのか、追加・変更工事がなされたといえる場合に、注文主と請負人との間にその追加等の合意や有償合意があったといえるのか、有償合意が認められる場合の相当金額はいくらかといった様々な問題が生じます。
 裁判所は、この問題について、「施工者が注文者に無断で追加・変更工事をするはずがない」というように、施工者側に有利な視点から事実認定を行いがちな傾向があるように思います。しかしこれでは、建築工事の専門家ではない注文者に「追加・変更発注のないこと」という、いわゆる悪魔の証明を強いることになってしまいます。むしろ、建設業法(19条)が、建設工事請負契約の当事者に、工事内容や代金額を明記した契約書の作成・相互交付を義務づけていることからすれば、追加・変更工事について新たに契約書が作られていない場合には、それら工事発注の事実はないと推定するようにすべきではないでしょうか。
 大臣認定偽装(㋘)は、以前のコラムでも取り上げた問題です。偽装の類型として、不正な試験体・データによる性能評価試験の受験、性能評価評価書の改ざん、大臣認定を受けた仕様とは異なる構造方法の製品製造等などがあります。
 偽装対策としては、性悪説を前提とした厳格な事前審査に加え、認定後の抜き打ち再試験を制度化することなどが考えられますが、行政審査のみで偽装を完全に防ぐというのは難しい面もあり、なかなかに悩ましい問題です。

 恒例の判決・和解報告では、下記の勝訴判決や和解事例の報告がありました。③の報告者は私です。
①賃貸用マンションの内壁下地ボードが接着不良・スリット不備・釘打ち不良のために剥離・落下したという事案について、施工業者と勝訴的和解をした事例
②擁壁が崩壊した宅地の売主及び仲介業者について、買主に対する不法行為責任を認め、擁壁再築費用と調査費用相当額の賠償を命じた判決を獲得した事例
基礎杭の支持層不到達により工場が不同沈下した事案について、施工業者、設計・工事監理者、現場監督兼主任技術者と控訴審において勝訴的和解をした事例
④擁壁の透水層に、正規の砂利等ではなく、天然ヤシ繊維シートが使われたことが瑕疵にあたると認められ、工事注文者の施工業者に対する損害賠償請求額の一部を工事代金請求額から控除する形で和解が成立した事例
⑤構造安全性、防火安全性、雨水浸入防止に関する瑕疵のある建物について、被告が、設計監理・施工を請け負ったのは自分ではないと主張したのに対し、被告の当事者性を認定し、注文主への賠償を命じる判決を獲得した事例
⑥アンカーボルト未施工・施工不良、ホールダウン金物施工不良、基礎杭と建物基礎とのずれ等の瑕疵のある建物について、施工者とコンサルティング業者の債務不履行責任・不法行為責任を認める判決を獲得した事例

 次の全国大会開催地は、私の故郷の金沢だそうです。金沢大会でも勝訴・和解報告ができるように頑張りたいと思います。

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