細かい話になるのでQ&Aでは触れていませんが、建物の瑕疵判断基準に関連して、「大臣認定」の仕様が問題になることがあります。
大臣認定とは、建築基準法などが定める技術基準に基づき、国土交通大臣が行う構造方法や建築材料の認定のことです(建築基準法68条の26)。認定のプロセスは、①建材メーカーが、認定を受けたい建材または構造方法の試験体を製作して性能試験を実施する→②国交省の指定性能評価機関が性能評価書を発行する→③性能評価書を添付した認定申請書提出→④国土交通大臣による認定、という流れが一般的です。
設計図書などで、建物の仕様として大臣認定を受けた構造方法が指定されている場合には、その構造を構成する詳細仕様も瑕疵判断基準になるといえます。
例えば、外装材メーカーが、自社製品の外装材について外壁の防火構造(建築基準法施行令108条)に関する大臣認定を受ける場合、その外装材だけでなく、外壁の主構成材料(外装材のほか、柱、間柱、構造用面材、内装材、断熱材等)、副構成材料(受材、通気胴縁、透湿防水シート、防湿材、目地部材、外装材留金具、留付け材、パテ、目地処理剤)やそれらの納まり等、外壁全体の「構造方法」を特定したうえで、性能試験・評価・認定申請がなされています。
つまり、その外装材を使用した外壁であっても、外壁全体が大臣認定の申請仕様に従った施工になっていなければ、認定を受けた防火構造としての性能を有しているとはいえません。よって、その申請仕様は、設計図書指定の防火構造としての性能を有するか否かの基準として機能することになるのです。
なお、大臣認定の構造方法は、特定の部位に関する特定の性能(上記の例では外壁の防火性能)の確保を目的としたものですが、構造方法を構成する詳細(申請)仕様は、その部位に関する他の性能を確保するための各種施工基準と概ね一致しています。
例えば、防火構造として大臣認定を受けた外壁の副構成材料に「通気胴縁」がありますが、たいがい、その胴縁幅は45mm以上として申請されています。これは、日本建築学会編「建築工事標準仕様書・同解説 JASS27 乾式外壁工事」などが定める胴縁の幅と一致していますが、このJASS27は、防火性能自体ではなく、外壁材やサッシの保持・固定という観点から、外壁下地材である胴縁の幅を規定しているものです(そのため、サッシ周りや外壁材目地部の胴縁は特に幅90㎜以上とするよう指示しています)。
つまり、一般的な施工基準が守られている限り、大臣認定の構造方法について構成材料の仕様違反が生じるような場面はほとんどないと考えられます。逆に言えば、建物の一般的な施工基準に反した施工については、大臣認定を受けた構造方法にも反している(その構造方法が予定している性能を有していない)可能性が高いといえるでしょう。
大臣認定を受けた建築材料に関する問題としては、東洋ゴム工業株式会社による免震ゴム偽装問題が記憶に新しいところです。
東洋ゴム工業が免震ゴムの大臣認定を受けるにあたり、不正に性能評価を得た疑いが発覚したことから、今年3月、同社は自ら大臣認定の取下を申請し、国交省は認定を取り消しました。怖いのは、性能評価機関(日本免震構造協会)も国交省も、メーカーの申告による試験データが正しいという性善説に立って評価・認定をしており、偽装は見抜けないと認めていることです。誰も気がつかないからやったという、姉歯元一級建築士による構造計算偽装事件を彷彿とさせられます。
これまでにも、各種の建材について大臣認定の不正取得が繰り返されています。大臣認定制度の信頼を確保する申請・認定プロセスの確立が求められるところです。