先月末、日本建築仕上学会主催の「第五回長崎県軍艦島調査見学会」に参加し、長崎市の特別許可の下、島内の建物内部を見学させていただきました。
2019年(第三回)、2021年(第四回)の見学会に続き、3度目の参加となります。
毎回ご一緒している建築士さんから、今年中に倒壊しそうだと聞いていた30号棟がどんな具合なのかが、今回一番の関心事でした。
幸いなことに、毎回お天気に恵まれます。
上陸の段階から、注目の30号棟が視界に入ります。
柱が歪んで見えるような気がしますが、この状態でまだ建っているのがすごい。
30号棟に近づく見学コースの終盤で、じっくり観察することにします。
いつも通り、上陸後はまず島内北の広場に向かいました。
もはやおなじみ感のある貯炭ベルトコンベアー。
以前から不思議なのですが、北側の支柱ほど傷んでいるのは潮風の当たり加減によるのでしょうか。
端島小中学校に向かう道が整備されていました。
小中学校南面の劣化状況は、昨年からさほど変化がないように思えます。
建物東面から中を覗いてみると
他の棟と同じく、柱梁の爆裂はかなりのものです。
それでも、30号棟のようにスラブが落ちそうな気配はまだありません。
前回見学時より仕上学会チームの参加者も増え、大学研究室の先生や学生、島内の構造物補修業者など別チームの上陸者も多くいらっしゃいました。
この北側広場までは来られませんが、東側見学広場や通路には観光客もたくさんで、私の上陸経験の中で最大の島内人口密度でした。
昨年、張り出し部分の2階落下を確認した65号棟(北棟)です。
今年時点でも、3階以上の階は落下せず持ちこたえていました。
広場のコンクリート試験体周りで学生さんが何らか作業しているのも、おなじみの光景となりました。
先般、日本コンクリート工学会で、軍艦島の試験体研究結果について発表があったそうです。
67号棟のX階段登場。
こちらも、階段下の露筋や張り出し部分の落下範囲に昨年から目立った変化を感じません。
例年と同じく、北棟から65号棟に入ります。
落下した張り出し部分の背面です。
スラブ四周部の爆裂が進んで、いずれスラブ全体が落下するのでしょう。
軍艦島建物群の内部に入って見学ができるのは、あと何年くらいなのかと考えてしまいます。
あの30号棟さえ、仕上学会第一回見学会の際は(自己責任で)内部に入れたようですが、数年前から、観光客以外の上陸者も立ち入り禁止(というより接近禁止)です。
階段はガレ場状態。
南棟から外に出ます。65号棟全体の外観は、やはり昨年からさほど変化ありません。
これまたいつも通り、65号棟を出て、南に向かいました。
左手が57号棟(職員社宅)、奥が16号棟(日給住宅)、右手が59号棟(鉱員社宅)です。
日給住宅内の柱とジブリ的スポットも昨年と同じ様子です。
軍艦島建物群の外部手摺は、潮でやられないように(スチールではなく)木製が採用されたそうです。
木は錆びませんが、長年経つうちに、部材接合部が強風を受けてばらけてしまうのでしょう。
57号棟・16号棟間の島内通路階段から外に出ました。
ここから見学の班分けが変更となり、私は長崎市職員の方が引率される班に合流しました。
この方、軍艦島の世界遺産登録関連の業務に携わられ、「軍艦島博士」とお呼びしたくなるような圧倒的知識をお持ちでした。
前回見学時とは違うルートを交えて島内を案内してくださり、以後、ちょっと観光気分も混じって楽しんでしまいました。