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コラム/近況報告
掲載日: 建物・建築

タイトル軍艦島建物群見学記2021(1)

 今月11日、建築士さんのご紹介で、日本建築仕上学会主催の「第四回長崎県軍艦島調査見学会」(協賛・建物診断設計事業協同組合)に参加し、長崎市の特別許可の下、島内の建物内部を見学させていただきました。
 一昨年に行われた第三回見学会に続き、私が参加するのは2度目です。複数回参加されている建築士さんによると、建物群の劣化は見学の都度進んでいるらしく、今回はどんな具合だろうとチャーター船の中で想像を巡らせました。

 前回の見学時には台風で壊れていたドルフィン桟橋が復活しており、ここから上陸しました。

今回も、貯炭ベルトコンベアーの脇を通って島内北の広場に向かいます。

 前回は一応立っていたコンベアー北端の支柱が1本折れていました。

 上陸した際、建物群全体が以前見たときよりも「スカスカ」だと感じたのですが、端島小中学校の南面に目をやり、その印象が強くなりました。窓枠やガラスの剥落が進んで、壁の開口部分が目立つせいでしょう。

2019年10月28日(前回)撮影

2021年11月1日(今回)撮影

 教職員宿舎も同じような状況です。

2019年10月28日(前回)撮影

2021年11月1日(今回)撮影

 65号棟(北棟)も劣化が進んでいました。
 張り出し部分のスラブが落ち、梁のコンクリート剥落範囲も大きくなって、SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造だということがはっきりわかります。

2019年10月28日(前回)撮影

2021年11月1日(今回)撮影

一方で、病院棟の外観はさほど変化がないようです。

2019年10月28日(前回)撮影

2021年11月1日(今回)撮影

 今回、複数の大学の学生さんが、広場の試験体を検分していました。

 X階段が印象的な67号棟。ぱっと見、階段そのものに大きな変化はないように感じましたが、下端の露筋範囲が広がっていました。屋上張り出し部分も落下しています。
 前回見学時の注意は、「梁の下で立ち止まってはいけない」のみでしたが、今回は「外壁から2~3m距離をとるように」が加わりました。やはり、建物張り出し部分から何が落ちてくるかわからないようです。

2019年10月28日(前回)撮影

2021年11月1日(今回)撮影

 中庭側から見た65号棟。
 左手が北棟(1945年築)、正面が東棟(1949年築)、右手が南棟(1958年築)です。
 外壁面が潮の影響を受けにくい位置のためか、躯体の変化はそこまで感じませんが、手すりの崩落は進んでいる様子です。

2019年10月28日(前回)撮影

2021年11月1日(今回)撮影

 今回も、北棟から65号棟に入りました。

 前回見学時は意識しませんでしたが、各階の階段室にちゃんと防火シャッター、避難扉が設置されています。

 前回よりも、躯体の歪みによる開口部の変形が気になりました。

 すでにコンクリートが剥落している梁より、亀裂が入っているだけの梁の下が危ないので気をつけるようにとの注意喚起がありました。

 階段室も含め、スラブ下端のコンクリート剥落箇所も多数あります。

 壁もこんなところがあります。コンクリート粗骨材の材質と割合がそもそも・・。
 案内してくださった大学教授の先生によると、軍艦島建物群の躯体コンクリートは塩分濃度も高いらしく、建築時に使われた生コンの練り混ぜに海水が使われているのだろうということです。立地からして、そうだろうなあと思います。

 65号棟(北棟)屋上に出ました。対面の南棟・左手の東棟を見ると、上階の劣化が早いことがわかります。

端島小中学校の屋上崩壊状況

65号棟(南棟)から見る北棟(対面)、東棟(右手)です。やはり上階の劣化が目立ちます。

 屋内も、上階の防火シャッターや防火扉が非常に錆びています。

 もはや見慣れてきた梁露筋ですが、何か怖いものがあります。
 中間階は、下端のコンクリートがまだ剥落していない梁も多いのですが(しかしその下を通るのが危険)、上層階・下層階の梁はほとんどが露筋しています。
 大学教授の先生によると、上層階は屋上防水切れの影響が大きく、下層階は外壁開口部から潮風が直接吹き付けやすいという要因だそうです。

 配管も含め、金属という金属が錆びています。

 65号棟(南棟)上層階から見る60号棟・61号棟の外壁はとても傷んでいます。

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