1ヶ月以上前の猛暑続きの頃、お世話になっている建築士の方が、新建築家技術者集団福岡支部の会員向けに開催された、マンション耐震補強工事の見学会に参加しました。
対象マンションは、築39年の鉄骨鉄筋コンクリート造(10階建)です。旧耐震基準時代に建築された本件マンションは、1階がピロティという耐震上の弱点もあり、地震のたびにエキスパンションジョイントが壊れていたそうです。
(鉄骨)鉄筋コンクリート造建物の耐震補強工事としては、耐震壁の増設、炭素繊維や鉄板巻きによる柱の補強などがメジャーな工法です。
こうした工法の耐震改修計画について所管行政庁の認定(「建築物の耐震改修の促進に関する法律」17条)を受けると、国や市町村から補助金交付を受けられます。
本件マンションの管理組合にとって耐震補強は長年の懸案事項で、耐震改修促進法に基づく耐震診断や耐震改修工事を検討していたものの、費用や工程の関係で断念せざるを得なかったそうです。
今回見学した耐震補強工事の工法は、現時点では補助金事業の対象とされていない(耐震改修促進法に基づく告示等の耐震技術指針には含まれていない)らしい「SRF工法」というものでした。
これは、ポリスチレン繊維製のシート(高延性材)を、ウレタン系接着剤(高靭性接着剤)で柱や壁に張り付ける工法で、耐震補強の思想としては、建物の剛性ではなく靭性を高めるものだと思われます。
上記の通り、耐震改修工事として補助金交付の対象にはならないものの、建築士さんのご説明によると、従来工法の耐震補強工事よりも費用は抑えられるそうです。
柱に巻き付けるシートは、このような断面のポリエステル製高延性材です。
シートは厚さ別に色分けされています。
工事を見学したのは、集会場の柱補強でした。
まず、補強する柱に専用の接着剤を塗布します。
柱にシートを巻き付け、叩いて接着剤に固定します。
シートの重ね代部分にも接着剤を塗布します。
2周目以降のシートを巻き付けていきます。
シートに重ね代をとるのは、(どうしても重なってしまう)
1周目と2周目だけで良いようです。
シートの巻き付けが終わっている駐車場の柱です。
これから仕上げ(多分モルタル)を塗るためのラス網も巻かれています。
途中まで仕上げの終わった柱もありました。
最終的に、柱の隅角に取り付けられた金具が隠れる厚さに
仕上げを施工するようです。
私はSRF工法開発メーカーの回し者ではないのですが、建物の耐震補強として靭性を高めるという考え方が何となく好きなのと、施工性が良く、震災時の実績もある工法のようなので、将来的には、これがきちんと耐震改修の補助金事業対象の工法に採用されると良いなと思いました。
メーカーパンフレットによると、鉄筋コンクリート造に限らず、鉄骨造や木造の建物にも適用できるようなので、一般住宅でも、耐震補強工法の選択肢になることはありそうです。