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掲載日: 近況報告

タイトル二級建築士への道(7)ー設計製図試験リベンジ編ー

 今月13日、二級建築士設計製図試験に2度目のチャレンジをしました。

 昨年の試験でやらかした後、エスキスや作図のノウハウを忘れないようにと、1~2ヶ月に1回くらいのペースで過去の本試験課題の設計製図をするようにしており、今年の本試験課題に沿った対策を始めるまでは、「去年のように、重大な条件違反をやらかさないように気をつけさえすれば、次は無問題」と思っていました。
 しかし6月になって、今年(令和2年)の本試験課題(シェアハウスを併設した高齢者夫婦の住まい)が発表されてからというもの、試験対策・受験を通じて、思わぬ苦戦を強いられることになりました。
 今年はコロナ禍のため、春頃の裁判期日が全て取り消されたり、昼も夜も予定が激減したりで、その頃にヘビーな起案にじっくり取り組んだ結果、7~8月はかなり試験対策に時間を取ることができました。しかし、そんなに本気を出さなくても済むと思っていたのに・・。
 今年の受験記は特にオチもなく、このコラムは何の面白味もない独り言のようなものです・・が、将来の二級建築士設計製図試験で今年に似た課題が設定されることがあれば、その受験生の方などに、少しご参考になれば幸いです。
 ということで、今回の記事は、二級建築士設計製図試験受験生の方向けとなります(それ以外の方が読まれても、意味不明かつ有益性ゼロであること請け合いです)。

◆今年の課題は難しかった!
 昨年の本試験課題(事務所併設住宅)では、予備校の課題演習・本試験ともプランニングに苦労した記憶はなく、どんな出題でもエスキスは1時間以内でまとめ切っていました。
 が、今年の課題では、そうはいきませんでした。今年は予備校に通わず、本試験課題発表後、某機関の設計製図通信講座を受講したのですが、軽い気持ちで初回演習課題に着手したところ、昨年予備校でインプットしたノウハウ通りでは、エスキスが全然まとまらないことに驚愕しました。
 通信講座の全演習課題(計11回)のうち、プランニングがスムーズにできたものはほぼなく、あちらの条件を立てればこちらが立たず・・という有様で、苦し紛れのエスキスに2時間超を要すること多々(本試験時間の5時間内に作図まで終えるのは無理)。おまけに、平面形状がかなり不整形だったり、1階2階の直下率が悪かったりと、良いプランとは言い難い出来になりがちでした。
 今思えば、この通信講座の問題難易度が高すぎたのではないかという疑惑もありますが(2冊入手した予備校出版問題集の演習課題は、そこまで難しくありませんでした)、やはり、シェアハウス併設高齢者住宅という課題自体、昨年に比べると明らかに難しかったように思います。
 今年の試験対策で難航したポイントをいくつか挙げてみます。

◇高齢者住宅の外構計画と建物プラン
 過去の本試験でも何度か出題されている高齢者住宅では、車椅子対応駐車場(幅3.5m)と、玄関アプローチまでの幅1.2m以上・勾配1/12~1/15のスロープ(奥行1.5m以上の上下平場付き)がお約束の外構条件で、これが敷地面積をかなり食います。
 私は、敷地の道路付けが東・南・西の場合(2方向道路含む)、建物をできるだけ敷地の北に寄せる(敷地の南側を大きく開けて、建物の日照採光を良くする)ために、駐車場は敷地南側、住宅玄関は建物の北東角として、敷地の東側に直線状のスロープを設置する計画(←道路付けが東の場合。西の場合は玄関北西角・スロープは敷地西側、道路付けが南の場合は適宜)をデフォルトとしていました。が、敷地の東西方向の長さが大きい(建物の横幅を大きくとれる)場合などは、玄関を建物南付けとし、敷地南側に折り返しスロープを設ける計画が、建物プランとの関係でベターだったりもします。その見極めが難しいところでした。
 道路北付けの場合は、駐車場はもちろん敷地北側に設けることになりますが、敷地の東西方向の長さが小さいときなど、駐車場の東西側だけでなく南側部分も建物配置箇所として活用しないと、要求室が収まらないというパターンが多くありました。
 昨年課題の事務所併設住宅では、建物形状が長辺(東西方向)7~8間×短辺(南北方向)4~4.5間、平面形状の突出は南側に2間×2間というのが定番でしたが、今年の課題演習では建物の東西方向(駐車場の南側)に突出が生じ、問題によっては南北方向の突出も生じるなど、1階平面形状がシンプルな長方形にならないことが多かったです(その場合、通し柱の数も増やさなくてはならないのが地味に面倒)。

◇シェアハウス+住宅の難しさ
 昨年課題(事務所併設住宅)では、各階プランとして、事務所部分が2階に配置されることはありえませんでした(非居住者が出入りする事務所部分は、当然1階配置です。店舗併設住宅などの課題でも、店舗部分は当然1階となります)。また、事務所部分に要求される主要室は、事務室や応接室程度で、休憩室、納戸、水回り(便所+洗面コーナー)などの全所要室を含めても、配置パターンは限られていました。1階に配置する住宅部分は、玄関、LDK、便所、2階は子供部屋(基本2室)や夫婦寝室、予備室、洗面脱衣室+浴室+便所というのが定番というように、課題の性質上、プランの基本パターンは決まっていたといえます。
 対して、今年の課題のシェアハウス併設高齢者住宅というものは、住居+住居ならではの難しさがありました。①1階は基本的にシェアハウス部分+2階が住宅部分のパターン(この場合、1階住宅部分は玄関、ホール、階段のほか、エレベーターの設置が指示されます)、②1階2階のいずれにもシェアハウス部分と住宅部分を配置するパターン、③1階部分は基本的に住宅部分+シェアハウスLDK、2階がシェアハウス個室等のパターンと、大きく分けて3つのバリエーションがあります。
 また、シェアハウスは主要室が多いうえに(最低限、LDKと入居者数に応じた個室の計画が必要です)、入居者個室は基本的に同条件(広さ、向き)とすべき関係上、居室配置が難しかったです。
 さらに、昨年課題の演習では、階段、洗面脱衣室、浴室などは横1間×縦1.25間サイズとして北側1列に並べておけばプランが成立するケースがほとんどでしたが、今年の課題は、シェアハウスと住宅部分の水回り所要室が相当なボリュームとなる関係もあり、うまく納めるのが大変でした。
 そして、住宅の寝室部分に付されがちな条件(1階の場合は上階禁止、2階の場合、直下にシェアハウス部分の計画禁止)に加え、吹き抜けや居室の厳密な面積指定などなど・・。
 シェアハウス併設高齢者住宅という課題は、問題のバリエーションをいくらでも広げることができるもので、ある程度演習の数をこなしても、次の演習課題ではまた行き詰まり、だんだん、自信喪失からの製図ウツのようになっていきました・・。

◇屋根伏せ形状(特に下屋)が複雑になりがち
 上記の通り、今年の課題では1階平面形状自体が複雑になりがちなうえ(その平面計画自体、改善の余地があったとは思います)、プランによっては、2階平面図の作図段階(ひどいときは、床伏図の作図段階)で、「下屋の屋根をどうやって掛けたら良いのだこれは?!」とフリーズすることに。
 昨年の課題演習では、エスキス段階では下屋の屋根伏せ形状を深く考えずとも、2階平面図の作図段階で、片流れとするか切妻にするかを適当に決めていました。しかし今年の課題演習でそれをやると、「片流れだとこの居室(2階)の窓が全てつぶれる~切妻にすると下屋と外壁の間に谷ができる(水が溜まる)~」ということに作図段階で気づき、プランの修正はもはや手遅れ・・という事態を数回経験しました。
 今年の課題演習で、1階小屋組に隅木や谷木を掛けなければならないプランも初めて経験し、昨年とは勝手が違うわ・・としみじみしました。本来は、どんな課題であっても、屋根伏形状はエスキス段階できちんと検討すべきなのでしょうが。

◇矩計図リターンズ
 二級建築士設計製図試験(木造建物の出題年)の要求図書は、「1階平面図兼配置図、2階平面図、2階床伏図兼1階小屋伏図、断面図、立面図、部分詳細図」という年が長らく続いていました。
 ところが今年は、「断面図+部分詳細図」ではなく、「矩計図」に・・・これは、今年の本試験課題発表時、受験生の阿鼻叫喚ポイントだったのではないかと想像します。
 いや~作図に時間がかかる!!立面図を作図するときも、屋根や開口部の高さを断面図から引っ張ることができず、測って描かなければならないし・・。
 仕方がないので、通信講座が始まる前に、矩計図は相当練習しました。最終的には手が勝手に動くようになり、専門学校時代のトレースでは2時間以上かかっていたような気のする矩計図が、40分くらいで描き上げられるようになりました。
 しかしこの矩計図の切断位置指定が曲者で、演習課題では、たいてい「1階2階の開口部を含む部分」の指定でしたが、とある演習ではバルコニー位置が指定されました。本当に、とにかく時間がかかる・・。

◆通信講座を受けて良かった
 今年の試験対策は、市販問題集を解いての独学でやり過ごそうかと思っていましたが、やはり、答案を添削してもらうことで気付くことも多く、実務家が採点する通信講座を受けて良かったと思います(コメントの字が汚くて、読み解くのには苦労しましたが)
 特に、床組構造に関する認識の誤りに気づけたことが大きかったです。昨年の本試験では、既存樹木上に2階バルコニーを生やすという重大な条件違反のため、床伏図は採点もされていないと思いますが、仮に条件違反がなくても、床組構造の理解の重大な誤りで、結局合格できなかったと思います。
 そして、私にとって難しすぎた通信講座の演習課題に取り組む中で、プランの引き出しもさすがに増えたように思います。もし、市販問題集だけで対策していたら、今年の本試験は異常に難しく感じられたでしょうし、エスキスに時間を使いすぎて、作図が明らかな未完成になったのではないかと思います。

◆本試験所感
◇何だか戸惑った
 いよいよ本試験の当日、問題文を一読した限りでは、通信講座の演習課題ほどややこしい条件もなく、それほど難しくなさそうに思えました(第一印象の難易度としては、予備校市販問題集と、通信講座の間くらいという感じ)。
 しかし戸惑ったのが、延べ面積「170㎡以上、250㎡以下」という指定です。こんな、上下の振り幅80㎡もある演習課題はなかった・・。
 そして、それほど難しくなく思える課題条件なのに、なぜかエスキスが簡単にまとまりません。結局、課題文の読み込み→エスキス完成→面積表・文字パートの完成までに1時間45分ほど費やし、作図に使える残り時間は3時間15分。これは、一般的な受験生の作図所要時間としては十分かもしれませんが、作図が早くない私は、3時間半は欲しいところです。
 平面形状が複雑にならず、直下率もそれほど悪くないプランにできたので、床伏図にさほど時間をかけずに済んだのが幸いでしたが、1階平面図兼配置図の仕上げの細かい描き込みまではできず、せめてあと5分あれば・・というところで時間切れとなりました。

◇やっぱりやらかしてしまったかもしれない
 今年は再現答案など作る気力もなく、何となくエスキスだけ再現してみました。

今年の本試験課題文

再現エスキス

 今、自分が認識しているものだけでも、失敗したなーと思うのは以下の点です。

【大きなマイナスではないと思われるが、減点対象になりそうなもの】
*建物短辺長さの設定 
 建物短辺長さを、4.25間(7735㎜)という中途半端な設定にしてしまいました。
 これでは、2階小屋組(母屋間隔910㎜)で、最上段の母屋と棟木の間隔が0.125間(227.5㎜)という半端な数字になってしまうのですが、これはありなのでしょうか。
 このプランの延べ面積(207.02㎡)は、上限指定(250㎡)までかなり余裕があるので、今思えば、建物短辺を南に0.25間伸ばしておけば良かったです。

*住宅部分LDK(A)が狭かったのではないか
 上記の建物短辺長さの設定にも関係しますが、住宅LDK(A)の面積が9畳というのは狭いように思います。せめて、2階個室(D3)バルコニーに合わせてLDKを突出させれば良かったかもしれません。
 通信講座の演習課題では、延床面積の設定に余裕がないものが多く、居室を広めに取ろうとすると延床面積オーバーになりがちだったため、平面図への記入指定がある設備や家具が納まる最低限の広さで居室を計画する癖がついてしまっており、それがアダとなりました。
 改めてエスキスを見てみると、シェアハウス部分のLDK(B)も狭いような・・。

*細かいところが描き切れていない
 各階平面図の室名はもちろん、要求設備・家具は全て描いたつもりですが、時間切れにより、1階平面図兼配置図に外構の細かい描き込みができていません。
 植栽は一本も描けず、屋外施設に指定されている緑化スペースも、区画に文字で「緑化スペース」と書いたのみです。
 立面図には建物脇のスロープを描く時間がなく、屋根スレートの線も描けませんでした。
 先ほど見てしまった予備校の本試験講評では、「今年の問題は難しくなかったので、作図勝負」と書かれていたりするのですが、そうなのだとしたら私は不合格だと思われます。

【けっこう減点されそうなもの】
*「敷地の南側道路・・に面して」計画することとされている「緑化スペース」と道路の間に、塀的な線を描いてしまった
 これだと、「道路に面して」計画したことにならないように思えます。時間切れのため、塀の説明書きとして「塀」とも「フェンス」とも書いていませんが、図面上、明らかに塀と受け取られるだろうなぁ。
 おまけに、敷地図付記の条件として、南側道路から北側2mの範囲は「建築物の外壁等を計画してはならない」とされているのが気掛かりです。塀は「建築物の外壁」ではないでしょうが、建築物ではあるので(建築基準法2条1号)、外壁「等」って何やねんというのが気になります。まぁ、この部分の塀の計画自体がアウトであれば、同じく「建築物」である門すら計画できないことになるので、さすがにこの点は考えすぎだと良いのですが。

【かなり減点されそうなもの・・もしかして失格?!】
*シェアハウスのアプローチ部分にスロープを計画しなかった
 この記事を書くまで、あえてシャットアウトしていた予備校の本試験講評を見てしまい、初めて気が付きました。
 複数の予備校講評で、「今年の本試験ではシェアハウス玄関アプローチにもスロープを設ける」旨の解説がされており、「なぬっ?」と思って課題文を見返したところ、「敷地の通路の計画において高低差が生じる場合は、スロープを設ける」とされています。
・・演習課題では、スロープは高齢者夫婦住宅のアプローチに設けるものと相場が決まっており、その思い込みがあって、シェアハウスアプローチにスロープを設けるべきだとは想定もしませんでした。。
 私のプランは、西側道路からシェアハウス玄関へのアプローチを、1間×1.25間のポーチ(GL+150)にしており、これは通路なのかという疑問もありますが、アプローチ真北に計画した駐輪場との高低差は通路扱いになるのか・・?なるのでしょうね。
 問題の上記条件が、シェアハウス部分でもポーチ高と玄関土間高を同レベルとしなければならないという趣旨を含むとしたら、シェアハウスアプローチにスロープを設けていないのは痛恨のミスです。もしかして失格レベルなのでしょうか・・。

 こうして総括すると、気づいているだけでもけっこうなやらかしをしており、今年もダメなのかもしれません(こんな記事を書いてしまうと、弁護士としてもうっかりしていると思われ、自分の営業妨害をしているような気がします;;)。
 来年は、試験課題が(試験対策としては全く作図したことのない)RC建物のターンでもあり、もう受験したくない・・と思いつつ、何となく、専門学校で使った製図テキストのRC部分をめくってみたり、何かの間違いで今年合格しないかと思ったり、合格発表の12月まですっきりしない日が続きそうです。

◆二級建築士設計製図試験を受験される方へ
 合格もしていない身で気が引けるところですが、今年の試験対策を経て、本試験までに私が肝に銘じたことを並べてみます。

*受験番号・氏名を書き忘れない
 何度か通信課題でやらかしました。書かないと失格です。

*文字パート(面積表、計画の要点等、床伏図の梁寸法等)を書き忘れない
 今年唯一受けた予備校模試で、割とうまくエスキスがまとまり、作図も時間内に完成したにもかかわらず、建築面積を書き忘れており、採点をしてもらえませんでした・・(やはり、自分の営業妨害をしている気がします)。
 予備校では、作図着手前に文字パートを書くように指導されると思います。私は、立面図の作図段階で外構プランの細かい調整をすることがあり(それ自体、あまり良くないかもしれませんが)、文字パートのうち、「計画の要点」だけは立面図を描いた後で書いていました。その書き忘れがないように、(立面図の後に描く)矩計図の作図欄には、試験開始時点で「計画の要点書いた?」と、薄く鉛筆書きをしていました。

*課題文はよくよく、よーく読む
 去年もよく読んだつもりではあり、今年もよくよく読んだつもりではあるのですが、なぜか重大な条件違反に陥ったり(昨年の既存樹木上へのバルコニー計画)、思い込みがあったり(今年のスロープ問題)というのは、本当に怖いものです。

*矩計図の切断位置指定を踏まえて平面プランを考える
 木造課題の要求図書に矩計図が含まれる場合、これはけっこう重要なポイントかと思います。2階バルコニー設置が要求される課題で、矩計図の切断位置がそのバルコニー部分に指定されてしまっている場合はどうしようもありませんが、そうではないのであれば、矩計図の切断位置はバルコニーを避けたいものです。そのように矩計図を描ける箇所(下屋部分でもバルコニー位置でもない箇所)を確保した平面プランが良いと思います。
 この教訓は、今年の本試験で役に立ちました。

*エスキスの段階で、下屋の屋根伏せ計画を考えておく
 言われなくてもそうしているという方がほとんどかと思いますが、上記の通り、私は演習課題を通じて学習しました。

*直下率の良いプランとする
 直下率があまりにも悪いとおそらくかなりの減点対象になるうえ、床伏図も複雑になり、ろくなことがないです。これも、言われるまでもないという方が多いかと思いますが。

 だんだん頭も朦朧としてきましたので、このあたりにしたいと思いますが、二級建築士の設計製図試験でも四苦八苦した私からすると、一級建築士試験など、恐ろしくハードルが高そうで、合格される方は凄すぎるとしか思えません。学科試験だけでも相当大変そうですし、絶対にチャレンジしないぞと心に誓うところです(何の宣言だ)。

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