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掲載日: 近況報告

タイトル欠陥住宅全国ネット金沢大会に行ってきました(1)

 1/26(土)、27(日)の週末に、欠陥住宅被害全国連絡協議会(通称・欠陥住宅全国ネット第41回金沢大会に参加してきました。

 今大会のメインテーマは、いわゆる「4号建物」の構造安全性です。
 4号建物とは、建築基準法6条1項4号に定める建物(「前三号に定める建築物を除くほか、都市計画区域・・準計画区域・・準都市計画区域・・準景観地区・・又は都道府県知事が・・指定する区域内における建築物」)のことです。
 この4号建物にあたる建物がどういうものか、誤解を恐れずにものすごくざっくり言うと、①2階建てまたは平屋建ての木造建物(延べ面積500㎡以内・高さ13m以下・軒高9m以下)、②平屋建ての鉄筋コンクリート造建物や鉄骨造建物(いずれも延べ面積200㎡以内)です。つまり、我が国に存在する戸建住宅の大半が4号建物に該当することになります。

 大会1日目の主なブログラムは、4号建物に関する建築基準法の仕組みと問題点、実際の問題事例についての弁護士・建築士による報告、構造設計一級建築士・大学教授・構造設計事務所代表の金箱温春氏による特別講演、1日目の報告者によるパネルディスカッションでした。

 今大会で取り上げられた4号建物をめぐる諸問題は、建物の構造安全性に関する建築基準法の規制の在り方が原因です。
 これまたざっくり言うと、4号建物以外の建物は、建築基準法施行令第3章第8節(81条~99条)に定める構造計算によって安全性が確かめられた構造方法としなければなりません(建築基準法20条1項1~3号)。
 これに対して、4号建物は、上記構造計算によって安全性を確かめた構造方法とするか(同項4号ロのルート)、建築基準法施行令第1節から第7節の2まで(36条~80条の3)に定める技術基準(設計施工方法を具体的に記述した、いわゆる「仕様規定」)に適合した構造とする必要があります(同号イのルート)。実務上、4号建物の構造設計はほとんど後者の方法でなされており、構造計算が行われているケースはほとんど見聞きしません。
 問題なのは、仕様規定(令36条~80条の3)を形式的に満たしている4号建物でも、設計条件によっては、令81条以下の構造計算(特に、いわゆる許容応力度計算)ではNGになるケースがあることです。これは、4号建物の仕様規定の水準・形式・項目が不十分だということにほかなりません。
 各地の弁護士・建築士の方が報告された紛争事例の4号建物は、いずれも特殊な設計で(大きな吹き抜け、スキップフロア類似の各階水平構面のずれ、火打ち梁のない勾配天井、2階の耐力壁の下に壁がない等)、構造計算をすると、建物の水平剛性が確保されていない、耐力壁が水平力を負担できないといった結果になったそうです。
 それら事件の被告(設計施工者等)からは、「4号建物として仕様規定を遵守している以上、構造計算は不要であり瑕疵ではない」との反論がなされたそうです。うち1件の裁判はすでに終結(調停手続に付された後で調停成立)しており、4号建物については構造計算が不要だという前提で、(構造計算の結果はNGなのに)構造補強費用は考慮せず、不具合現象の補修費用の支払のみを合意する調停となったそうです。
 確かに、建築基準法20条の文理解釈上、4号建物(正確には「4号イ建物」と言うべきでしょうか)に構造計算は求められていません。しかし、4号建物でも他の建物でも、およそ建築物である以上は、「自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して安全な構造」であることが求められているのに(建築基準法20条1項本文、施行令36条の3第1項)、4号建物についてだけ、現実の施工状況を反映した構造計算結果がNGになっても瑕疵があるとは認められないなんて、どう考えてもおかしなことです。
 私がこれまで取り扱った4号建物の瑕疵に関する事件では、仕様規定違反の設計施工について、所定性能の有無を立証すべく構造計算に関する攻防が行われることはよくありましたが(相手方が提出してくる構造計算は、現実の施工状態とはかけ離れた条件設定だったりします)、仕様規定のない項目について構造計算結果がNGという事案は未経験だったので、まさかその場合には瑕疵が認められない可能性があるとは・・!と非常に驚きでした。
 もっとも、特殊な構造の4号建物について、構造計算結果がNGとなる設計施工を瑕疵として認定した裁判例も存在するので(仙台地裁古川支部平成14年8月14日判決、大阪地裁堺支部平成18年6月28日判決等)、一概に、4号建物は仕様規定を守っている限り構造計算がNGでもやむなしという認定がなされるわけではなさそうです。
 しかし、そもそもの問題は、仕様規定を守っていても構造計算ではNGという結果もありうるような法律の規制の仕方です。建物に限らず、本来、仕様規定というのものは、それを守ってさえいれば余力(安全率)をもって所定性能を充足すべき(仕様規定を遵守すれば、手間やコストのかかる検討をしなくても十分な性能が担保されるべき)ものです。ところが、現行の建築基準法令の規制では、4号建物に関する仕様規定の質的・量的な不備のために、他の建物に関する性能規定との逆転現象が起きているといえます。

 4号建物に関する法律上の問題はそれだけではありません。建築確認の手続でも、建築士の設計による4号建物については構造関係規定(建築基準法20条1項4号イ、令36条~80条の3)への適合性審査が省略されることになっているため、建築確認申請にあたって、構造図面(壁量計算図等)の提出は求められません。これをいわゆる「4号特例」といい、数年前には撤廃の動きがあったようですが、どういう政治的判断があったのか、未だに存続しています。
 この特例は、4号建物の構造設計について、建築士である設計者が十分な検討をしているはずだという性善説に基づいた制度にほかなりません。しかし、建物の安全性担保に関する制度設計にあたって、性善説に立脚することがいかに危険かは、数々の耐震偽装事件や大臣認定不正取得事件の教えるところではないでしょうか。
 ということで、4号建物に関する建築基準法令の規制は、大幅な見直しが相当ではないかと思われるのですが、それを実行した場合、我が国の建物の大半を占める4号建物のほとんど全てが既存不適格建物になってしまうため、政治的なハードルがなかなかに高そうです。しかし、現状を放置していて良いはずはなく、熊本地震で問題になった「直下率」の問題等も含めて、4号建物の構造安全性向上のために今後の法改正は必須だといえます。

(続く)

金沢大会写真④金沢大会写真③

 

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