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コラム/近況報告
掲載日: 近況報告

タイトル欠陥住宅全国ネット鹿児島大会に行ってきました(2)

 鹿児島大会1日目の後半には、横浜マンション傾斜問題に関する緊急報告とディスカッションが行われました。マンション購入者は、構造安全性に関する施工状況に関心を持っても調べようがないのだから、目に見えない部分の安全性について、マンション事業者による手抜きや見逃しが起きないようにすることが大切だという共通認識の基に議論がなされました。

 緊急報告では、このマンションのPC杭設計施工に関する問題が取り上げられました。これらの杭は「根固め工法」によって施工されており、この工法では杭1本あたりの支持力を高めることによって杭本数を減らすことができるそうなのですが、その分、1本の杭に何らかの問題があったときの全体への影響が大きくなるそうです。また、先日のコラムでも取り上げたように、場所打ち杭ではなく既成杭を採用する場合のリスクについても指摘がありました。支持層の深度変化が激しい地域で既成杭を使うのであれば、ボーリング試験やラムサウンディング試験(ボーリング試験より安価で、SWS試験では不可能な固い地盤の調査も可能な動的貫入試験)などをうまく組み合わせることによって、地盤の調査箇所を密に取っておくべきだったという意見が出ていました。

 1日目最後の大会アピールでは、地盤に起因する建築トラブルに直面してきた弁護士・建築士・地盤技術者・被害者として、消費者が地盤トラブルに遭わないようにするための体制づくりを今後も強化していこうというアピール案が採択されました。

 2日目のメインプログラムは判決・和解報告で、5名の弁護士から、下記の勝訴判決や和解事例の報告がありました。
①基礎構造の瑕疵について、販売会社(小規模)やグループ会社オーナーの不法行為責任が認められた事例
②塀の倒壊が施工の瑕疵によるものか、東日本大震災による不可避な現象であるかが争われ、施工の瑕疵が認められた事例
③擁壁の欠陥について、施工業者から外構工事契約の成立自体を争われた事案での和解報告
④追加工事代金の請求に対して「追加工事が行われていない」「本体工事に含まれている」「無断工事である」「有償合意がない」「有償性は認めるが金額の相当性を争う」との反論を展開し、工事の瑕疵担保請求権との相殺も主張して最終的にゼロ和解となった事例
⑤分譲マンションの連結送水管からの漏水について、配管材料、防食処理、埋め戻し土、埋設深さ等の瑕疵を主張して、施工業者や下請業者に加え、マンションデベロッパー(販売主)についても「建物としての基本的な安全性を損なうことがないように配慮すべき注意義務」の懈怠があるとして不法行為責任を追及し、最終的に下請業者が全面的に補修する旨の和解が成立した事案

 ①の判例報告では、基礎の瑕疵について「あと施工アンカー」による補修が相当補修方法と評価できるかが争われ、これが明確に否定されたという点に興味を持ちました(私も今、「あと施工アンカー」による補修の相当性が問題になりそうな事件を担当しています)。
 ⑤の事例は和解で終了していますが、判決となっていた場合に、「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」に関し、マンション供給業者の不法行為責任についてどのように判断されたのか大変気になるところです。

 次の大会では私も勝訴判決報告ができればいいなと思いつつ、帰途についた次第でした。

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