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コラム/近況報告
掲載日: 近況報告

タイトル欠陥住宅全国ネット鹿児島大会に行ってきました(1)

 10/31(土)、11/1(日)の週末に、欠陥住宅被害全国連絡協議会(通称・欠陥住宅全国ネット)第39回鹿児島大会に参加してきました。
 欠陥住宅全国ネットは、阪神大震災を経て、日弁連の土地住宅部会が呼びかけ人となって立ち上げた全国各地の弁護士・建築士・研究者・市民のネットワークです。年に2回、欠陥住宅問題に関連する講演や裁判の報告などが行われるシンポジウムが全国各地で開かれます。
 私は弁護士登録した年からほぼ毎回大会に参加しています。初回参加の平成18年福岡大会の頃は参加者に知り合いがおらず心細かったものですが、今や全国各地の幹事弁護士・建築士の方ともすっかり顔なじみになりました。

 今回の鹿児島大会のテーマは「宅地の地盤調査・評価と法的規制の問題点」です。地盤調査の問題は、最近取り沙汰されている横浜マンションの問題と絡むところでもあり、非常にタイムリーでした。
 1日目のプログラムは、①講演「宅地地盤調査の基礎知識」(地盤調査会社の方)、②地盤調査(後記のSWS試験)の評価が争点となった事案の判決内容や過去の裁判例分析報告(弁護士)、③講演「地盤調査の方法と問題点(ガイドライン策定等)」(工学会理事・地盤品質判定士の方)、④横浜のマンション傾斜問題に関する緊急報告、⑤大会アピール「適切な地盤調査が実施されるような施策を求めるアピール」と盛りだくさんでした。

 博多駅で新幹線に乗り遅れた私は②の始まる頃に会場に到着し、①の講演は聞くことができませんでした。大会資料を確認してみると、国土交通省告示第1113号に定める各種地盤調査方法の解説から始まり、小規模建築物の宅地地盤調査方法として最もメジャーな手法であるスウェーデン式サウンディング(SWS)試験ボーリング検査/標準貫入試験について基本的な解説がなされています。
 興味深いのは、聞いたことのなかったSDS(スクリュー・ドライバー・サウンディング)試験という調査方法が解説されていることです。この調査方法はSWS試験の進化版というべきもので、SWS試験で計測する(地中に貫入させる)ロッドの回転数や載荷重に加え、ロッドの回転トルク(物体を回転させるために必要な力)、1回転あたりの地中貫入量、沈下速度・回転速度を計測するものだそうです。SWS試験では土質を正確に見分けることが難しく、ロッドが地中に貫入したときの音や感触、ロッド先端のスクリューに付着した土の観察によって「砂質土」「粘性土」等の大雑把な土質判定しかできないのですが、SDS試験では回転トルクの分析から、より正確に土質区分を判定することができるため、安価にボーリング試験に近い調査が可能になるということです。
 本当に興味深い話なのですが、資料を読んだだけでは回転トルクの分析による土質判定のメカニズム詳細がよくわからず・・・あー遅刻しなければよかった。。この調査方法が普及したとき、「信頼性はSWS試験より高く、ボーリング調査よりは低い」と評価されるのか、あるいは全然別の位置づけになるのか気になるところです。

 ②の裁判例報告では、裁判実務でSWS試験がどのように評価されているのかという例を知ることができ、これも興味深いものでした。SWS試験結果の評価が問題になるような裁判を担当することを想定すれば、表面的な知識だけではなく、試験の特性や地盤支持力についてある程度深い理解がいるなぁと感じました。
 例えば、ベタ基礎構造の建物に対する地盤の支持力を検討する場合、基礎直下から深度2mの範囲の支持力が問題とされるのですが、その範囲に分布する地層の支持力にばらつきがあるケースでは、単純に支持力を平均化すれば良いというものではなく、層状地盤特有の検討が必要になります。そういう検討を適切に行うには、やはりSWS試験の結果を適切に評価できないといけません(ただ、わずか2m範囲での地層変化を細かく分析するには、そもそもSWS試験では限界があるのでは?という疑問も・・)。

 ③の講演は、まさにその深い理解の一歩につながるものでした。内容が盛りだくさんで全てはご紹介できませんが、特に目からウロコだったのは、地盤調査の位置付けについてです。私は、ボーリング試験やSWS試験といった地盤調査(原位置調査)こそ、計画地の地盤構成把握の第1歩だと思っていましたが、ご講演者の中村裕昭氏によると、あるべき地盤調査とは、⑴地形や地質の概況調査(事前調査)から、計画地の地盤構成を予め想定する→⑵その想定が正しいかどうかを確かめるために原位置調査を行う、ということです。なるほど、そのような視点からは、横浜のマンション傾斜問題についても、計画地の支持層が不陸の激しい「土丹層」であることを前提として、原位置調査の箇所数やポイントが適切に決められていれば、PC杭の長さ不足(支持層不到達)という事態は避けられたのだと思われます。
 また、SWS試験では、測定される貫入抵抗(荷重Wsw、半回転数Nsw)の評価が土質(粘性土or砂・礫質土)によって異なることや、ロッド地中貫入時の音による土質推定では、軟弱粘土層厚は実際より薄めに、砂質土層厚は実際より厚めに評価されがちな傾向であることなどを、図解を基にわかりやすく説明していただきました。

(続く)

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