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掲載日: その他

タイトル事例のご報告(4) ◆住宅紛争処理手続~調停編①~◆

 あるマンションの欠陥問題について管理組合から受任していた、福岡県弁護士会住宅紛争審査会の調停事件が先日終了しました。審査会に申請した仲裁事件については以前記事にしたところですが、審査会の調停事件を受任したのは初めてのことでした。

 本件の主な欠陥は、外壁タイル(二丁掛タイルモザイク貼り)の広範な浮きやクラック、耐震スリットの一部未施工や防水上支障があるスリットの位置不良です。タイルの浮きや不陸は、竣工後1年目の定期点検時から指摘されていた事項でした。竣工から7年後には、特に外壁打継部のタイルが目立って浮いていたため、管理組合が自主検査を行い、剥落防止のために問題箇所のタイルを撤去してみると、その部分のタイル裏面にゴム製の止水シートが施工されていた(つまり、タイルがコンクリート躯体に接着されていない状態だった)ことがわかりました。

      

 また、外壁打継部以外の部分にも、原因不明のタイルの浮きやクラックがかなり見られました。これらの欠陥補修について、販売主と管理組合の話し合いがまとまらなかったため、販売主の方から調停申立がなされていました。
 この調停事件を進める中で、感じたことをいくつか書いてみようと思います。

◇相手方と期間制限の壁
 マンションの施工業者は、竣工の数年後に倒産していました。工事監理者(法人)は現存しているものの、矢面に立つことなく、管理組合との交渉は販売主のみが対応していました。
 私が本件に関与したのは、販売主から管理組合に調停申立予告がなされてからでした。管理組合としてどう対応すべきか(販売主との調停に応じるか、調停を蹴って販売主と設計監理者を提訴するか)を検討するにあたり、まず、外壁タイルや耐震スリット以外の、管理組合が問題視していた細々とした欠陥について、スクリーニングをかける必要がありました。
 経年劣化などではなく、明らかに施工が悪いよなぁという欠陥もいくつかあったのですが、これを現時点(検討時点)で販売主に請求できるかというと、難しいものばかりでした。
 販売主とマンション区分所有者の売買契約において、瑕疵担保期間(除斥期間)の定めは、「構造耐力上主要な部分」及び「雨水の浸入を防止する部分」の構造耐力・雨水浸入に影響する瑕疵については10年、その他の瑕疵については1年または2年という、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)施行後の契約としては典型的な内容となっていました。管理組合が問題としていた欠陥の大半は、「構造耐力上主要な部分」等の瑕疵とは言いがたく、除斥期間経過前の権利行使もなかったため、販売主への追及を断念せざるを得ませんでした。

 なお、建物購入者は、直接の契約関係にない施工者や設計監理者に対しても、「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」(安全性瑕疵)について不法行為責任を追及することができます(最高裁平成19年7月6日判決)。
 この安全性瑕疵とは「構造耐力上主要な部分」等の瑕疵に限定されませんが、本件では、検討時点で販売主への責任追及が難しい瑕疵(「構造耐力上主要な部分」等の瑕疵にあたらないもの)は、安全性瑕疵にあたるとも言い難いものでした。
 そもそも、施工者は倒産しているので責任追及のしようもありませんが、エキスパンションジョイントの手すりの欠陥(設計図書の指定と異なる、可動性のない手すりの設置)などは、工事監理者の義務違反を指摘する余地はあっただけに、安全性瑕疵と評価するのは難しいというのが残念でした。また、不法行為責任についても時効期間が問題になりそうでもありました。

 こうした検討の結果、管理組合として、販売主が申し立てた調停に応じることにしました。

(続く)

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