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コラム/近況報告
掲載日: 法律

タイトル欠陥住宅全国ネット東京大会に行ってきました-木造建物の安全性-(1)

◆久しぶりの上京
 12月4日(日)、欠陥住宅被害全国連絡協議会(通称・欠陥住宅全国ネット)第52回東京大会に参加しました。
 全国大会にZoom配信が導入されて以降、私は、初回の奈良大会、先般の福岡大会(地元開催)はリアル、その間の仙台大会、大阪大会はオンラインと、参加形式がちょうど半々でした。今回は上京したい用事があったのに加えて、大会テーマが個人的関心度の高いものであったことから、迷いなくリアル参加を選択しました。
 早くに予約を取ったビジネスパックが旅行支援の後適用とならず、支援対象のプランを取り直すのにキャンセル料が発生したのがちょっと悔しい。上京は2017年の東京大会以来のような気がしますが、コロナとかGOTOとか旅行支援とかWeb会議・配信のこれほどの普及とか、当時は想像しなかった世の中になったものです。

◆4号建築物に関する法規制の問題
 というのが、本大会のテーマでした。
 いわゆる4号建築物に関する法規制の問題点(建築基準法が構造計算による安全確認規定を設けていないため、仕様規定に適合していても、構造計算上は所要の安全性を欠く設計や、建築確認申請において構造検討関係の図書省略を認める4号特例)は、第41回金沢大会のメインテーマでもあったのですが、6年後の現在でも、状況は根本的に変わっていないというのが実情です。
 もっとも、本年6月公布の「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」において、建築物省エネ法改正による建物の重量化を踏まえた建基法の改正がなされ(2025年4月施行予定)、現行4号建物の問題点については、以下の通り改善が図られています。
 【木造建物に関する比較】
 *構造計算義務の免除
  現行法(4号建物):2階建以下&延べ面積500㎡以下&高さ13m以下かつ軒高9m以下
  改正法:2階建以下&延べ面積300㎡以下
 *確認申請の特例対象
  現行法:4号建物
  改正法:新3号建物(平家&延べ面積200㎡以下)

 また、木造建築物の必要壁量(建基法施行令46条4項)についても改正が予定されています。
 今大会の参加を機に、忘れないうちにと、現行の建基法と改正内容を表に整理してみました。


 建基法と建築物省エネ法改正法を照合して何度かチェックしましたが、誤りがないことは保証の限りではありません。
 間違いに気がつかれた方は、ご一報いただけますと幸いです。

◆2つの基調報告
 大会の基調報告として、佐藤実構造設計一級建築士(株式会社M’s構造設計代表)より「木造建物の安全性はどう変わる~4号特例縮小後の行方~」、大橋好光氏(東京都市大学名誉教授)より「木造住宅の耐震の課題~大地震後も住み続けられる木造住宅を~」というご講演をいただきました。
 どちらも、現行の建基法は真に「最低の基準」(1条)たり得ているのかという観点から、特に、4号建物に適用される仕様規定の疑義を共通のテーマとして、具体事例を織り交ぜつつご解説いただくものでした。
 各建築士の基調報告から、4号特例の縮小後も(新)3号建物について特例は残るうえ、(新)2号建物の木造住宅や新3号建物など、典型的な小規模戸建住宅の多くが構造計算義務対象とはならないことから、現在の4号建物をめぐる問題の根本的解決は図られていないという認識を新たにしました。
 「大地震で命を落とす生き物のほとんどは人間。それは人間が造った建造物が倒壊するから」「地震発生は防げない。しかし、建物が地震で倒壊することは本来防げるはず」という佐藤建築士ご講演の締めくくりには重みがありました。
 また、両基調報告とも、建基法の性能規定自体の課題(目標とする性能が低すぎるという問題意識)を共通して取り上げられていました。
 建基法の耐震基準(=品確法の耐震等級1)は中地震の際に損傷せず、大地震の際に倒壊しない(人の死傷を防ぐ)ことを目標性能とするものであり、大地震の際に損傷しない(建物が再利用できる)ことまでは想定されていません。また、建基法の性能規定に適合するはずの鉄骨造(構造計算によって安全性が確認されているはずの非4号建物)が、大地震の際に倒壊した例などもあるようです(施工不良などの要因が全くなかったのかはわかりませんが)。
 耐震等級3レベルの耐震性(等級1の1.5倍)があれば、大地震(単発の揺れ)に際して倒壊しないのみでなく、繰り返しの揺れに対しても大きく損傷しないと言われています。耐震性の最低基準である等級1を等級3に高めるためのコストアップは、小規模住宅では概ね数十万円レベルということです。
 大規模地震時に命が守られる確度を上げるためにも、新たな住宅取得コストという経済的大ダメージを負うことを避けるためにも、耐震等級を2以上とする選択が建築主に委ねられている現行の法制度は見直されるべきなのかもしれません。

(続く)

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