先般のマンション工事&道路工事見学に引き続き、今月初めにも工事見学の機会に恵まれました。
今回の現場は、福岡県弁護士会の新会館建設工事です。裁判所庁舎の六本松移転に伴い、隣接地には検察庁庁舎や弁護士会館の建設も進められています。
建物は鉄骨造で、現在の外観からはわかりにくいですが地上4階建てです。
外壁材は押出成形セメント板
2階北側はまだ外壁が建て込まれていません。
昨年、学校の「建築構造」の授業で習った鉄骨造の知識を総動員
・ブレース:鉄骨の軸組に施工する斜材。木造の筋交いに該当する部材で、引張力を負担する。
・ダイアフラム:コラム柱(角型鋼管)と梁(H型鋼)のフランジ(後記)が取り合う部分の柱位置に設置する鋼板。中空のコラム柱が、梁からの応力伝達によって変形するのを防止する役割を果たす。
コラム柱の外側に露出する外ダイアフラム形式と、柱の内側に収められる内ダイアフラム形式とがある。
・高力ボルト接合:鉄骨の継手や仕口を、スプライスプレートと高力ボルトで接合する方法。鋼材間の摩擦抵抗によって応力を伝達する方式(摩擦接合)が多い。
・スチフナー:H型鋼のウェブ(後記)に取り付ける補鋼材。ウェブの局部座屈防止の役割を果たす。
コラム柱と大梁の仕口は、完全溶け込み溶接(溶接金属を母材と一体化させる溶接方法)で接合します。
完全溶け込み溶接の仕口は、柱と梁が一体化した「剛接合」となります。
ダイアフラムと柱、梁のウェブと柱の各溶接線が交差しないように、ウェブには扇形の切り欠き(スカラップ)を設けるのが、スカラップ工法です。
しかし、このスカラップは梁の断面欠損でもあり、応力の集中部にもなるため、震災時には、スカラップを起点とする仕口の破断が多くみられました。
そこで、現在では改良型スカラップ工法や、ノンスカラップ工法(スカラップを設けない工法)の採用が増えているようです。この建物の柱梁仕口も、ノンスカラップ工法となっています。
ブレースのガセットプレートと柱梁を接合する鋼板には、スカラップが設けられています
柱と小梁の仕口は、柱に隅肉溶接したガセットプレートと、
H型鋼のウェブを高力ボルト接合とします。
この仕口の接合には、丸頭のトルシア型高力ボルトが使われています。
高力ボルト接合の仕口は、「剛接合」と違って、部材間で
曲げモーメントを伝達しない「ピン接合」として扱います
耐火建築物の鉄骨には耐火被覆(ロックウール吹付)が必要です。
耐火被覆の施工済み箇所と施工未了箇所があります。
梁の配管スリーブ
かなりの断面欠損に思えますが、開口部の補強でカバーできている計算ということでしょうか
勾配屋根らしく、鉄骨の垂木が施工されています。
垂木間隔は木造の場合の2倍以上ありそうです。
軽量鉄骨の軸組は時々見ることがありますが、今回は重量鉄骨の工事現場を見学でき、貴重な経験となりました。