担当している建築紛争事件の裁判、どれもなかなか終わりません。
専門訴訟といわれる分野の裁判はどうしても長引く傾向にありますが、第一審で3年とか平気でかかるのはどうにかならないものだろうか。
福岡地裁では建築訴訟に調停制度が正式導入されて2年くらい経ちましたが、それで訴訟全体の所要期間が短くなったのかどうかは、まだ何とも・・といった感じです。(建築訴訟と調停制度については、そのうち別の記事にまとめてみたいと思いますが、調停が不成立の場合、裁判の終結がかえって遅れることもあるような気がします)
そんなこんなで、稀な更新のコラムでも紛争解決事例を取り上げることができず、工事見学ネタ続きです。
今回見学の機会をいただいたのは、戸建木造住宅の基礎コンクリート打設工事です。書面の起案がそこそこ立て込み、学校の期末試験も近いという悪条件でしたが、コンクリート打設工事の状況を長時間観察した経験はなかったので、張り切って出かけました。
見学させていただいた現場の基礎構造は布基礎です。 そういえば、今まで関わった建築紛争事案の戸建住宅は、全てベタ基礎でした。
コンクリート型枠は木製ではなく鋼製でした。セパレーター(型枠間の間隔を保持する部材)も、鋼製型枠用のものが取りつけられています。
型枠はターンバックル付きの支保材で支えられています。
コンクリート打設後に、脱型(型枠取り外し)しやすくするために、型枠には剥離剤を塗っておきます。
剥離剤を塗布してから型枠を組み立てる分には問題ありませんが、型枠の組立後に剥離剤をスプレー噴射したりすると、型枠に挟まれた鉄筋にも剥離剤が付着してしまい、鉄筋とコンクリートに所定の付着強度が得られないおそれがあります。
一般的なアンカーボルトの先端はJ型やL型に折れ曲がっていますが、この現場のアンカーボルトはハウスメーカーのオリジナル部材らしく、直線状で端部が円形をしています。
アンカーボルトと同じくらいの本数設置されている黄色の棒。
上端から1㎝くらい下がったところに蝶々の羽のようなものがついています。
羽の高さまでコンクリートを打ち、そこから棒の上端の高さまでレベラーを流すようです。
型枠・アンカーボルト・黄色棒の各所の高さレベルを揃える際にも使われたのか、コンクリート打設工事の当日、まだ測量機が据え置かれていました。
基礎フーチング部分の鉄筋は、コンクリートかぶり厚を確保するためのスペーサー部材に乗せられています。
基礎スラブやフーチングの鉄筋に使う一般的なスペーサー部材は、サイコロやバーサポートというものですが、この部材はハウスメーカーのオリジナル部材のようです。
鉄筋の着色は、現場搬入前に、呼び径ごとに色分けして塗られたものです。
コンクリートポンプ車です。
コンクリートの圧送前に、富調合(セメント量の多い)モルタルを圧送して、配管内部を潤滑にしておきます。
予定より30分ほど遅れて、生コンのミキサー車がやってきました。
コンクリートの練混ぜから打込み終了までの時間の限度は、外気温が25℃未満のときは120分、25℃以上のときは90分というのが原則です。
生コン納入書に書かれているミキサー車の工場出発時刻によると、今回の到着遅れは打設終了時間の関係ではセーフのようです。
納入された生コンの呼び方は「普通 30 15 20 N」です。
これは、普通コンクリート、呼び強度30N/ mm 2、スランプ(後記)15㎝、粗骨材最大寸法20mm、普通ポルトランドセメントということです。
混和剤として、高性能AE減水剤が加えられています。コンクリート中に微細な空気泡を分布させる混和剤で、生コンの配合にあたって単位水量を減少させたり、耐凍害性を向上させる効果があります。
ミキサー車からポンプ車に生コンを移し、いよいよ打設開始です。
外構部分から打設が始まりました。
打設したコンクリートには、バイブレーターで振動を与えます。砂・骨材・セメントなどが均等分布になるよう混ぜ合わせ、大きな気泡を抜いたりもするためですが、加振の時間が長すぎると、コンクリートの骨材と水・セメント(ペースト)が分離してしまいます。
1箇所あたりの加振時間は5~15秒が適切だとされており、建築施工管理技士や建築士試験の頻出事項です。
ポンプを操作する人が腰につけているのは、ポンプの高さや位置を調節するリモコンです。
2種類のバイブレーター ↓
コンクリート打設箇所を追いかける形で、天端のコテ均しが行われていきます。
建物基礎部分のコンクリート打設、加振、基礎フーチング天端のコテ均しが順次続きます。
(続く)