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掲載日: 建物・建築

タイトル二級建築士への道(3)~鉄筋加熱の謎~

 2年生の前期カリキュラムも終盤に差し掛かった学校通い。金曜日の講義科目は「建築施工」です。先日の講義で、私が近年謎に思っていた鉄筋加工の問題について、何ともグレーな解答が得られました。

 鉄筋コンクリート工事の第一工程となる鉄筋(配筋)工事では、鉄筋加工や組立を行います。
 躯体端部の鉄筋は折り曲げてフックにし、直交する鉄筋にかぎ掛けするのですが、この折り曲げ加工にあたって鉄筋に熱処理を行うのはご法度で、常温(冷間)加工でなくてはならないとされています。鉄筋に熱を加えると、鋼材としての機械的性質が変化してしまうというのがその理由です。

              

 一方で、鉄筋の継手方法には、非加熱方式(重ね継手や機械式継手)のほかに、ガス圧接継手や溶接継手など、加熱を伴う方式もあります。

             

 ガス圧接継手とは、接続する鉄筋に圧接器を取り付けて突き合せ面を加圧し、酸素アセチレン炎で加熱して、圧接部の原子を金属結合させる継手方法です。圧接部には膨らみが生じるのですが、建設省告示第1463号「鉄筋の継手の構造方法を定める件」は、この膨らみについて、鉄筋径を基準とした直径や長さ、圧接面のずれや偏心について基準を設けています。

            

 溶接継手は、裏当て材を使った突合せアーク溶接(アーク溶接:母材金属と溶接棒を溶融する接合方法)か、重ねアーク溶接(径25㎜以下の場合)という方法で行います。上記の告示で、溶接材料の強度性能は、溶接される鉄筋の強度性能以上でなくてはならないとされています。

 これら継手方法の原理からして、施工が適切であれば、鉄筋の接合強度自体に問題はないと思われます。しかし、加熱の影響を受ける範囲は接合面(接合部の鉄筋断面)だけですむはずがないので、継手部付近の鉄筋の機械的性質というものに影響はないんでしょうか。
 先日の「建築施工」の講義後、講師の先生(某スーパーゼネコンにお勤めの偉い方)に、ガス圧接継手や溶接継手の加熱は、鉄筋にとって悪影響ではないんですか?と質問してみました。
 するとあっさり、「良くないですよ」とのご回答が(゚Д゚;)
 先生曰く、ガス圧接継手は、膨らみのある接合部より、その付け根部分の鉄筋が熱の影響を受けて破断することがあるんだそうです。なるほど、接合部自体は、材質の強度低下を膨らみ断面の大きさである程度カバーできても、その根元はそうはいかないということなのでしょうか。

            

 さらに先生曰く、ガス圧接継手の場合、鉄筋を圧接器に固定するためのビス留め(?)で、鉄筋の断面欠損が起きて強度が低下することがあるんだとか。

              

 そうすると、鉄筋を加熱する継手方法はやめた方がいいのでは・・?と思えてきますが、先生によると、「ガス圧接や溶接継手を認めないと、建設業界が成り立たないから」とのことです。
 確かに、非加熱方式の継手方法も、重ね継手は鉄筋径が大きくなると使えない(鉄筋量の増加によって建物が重くなるのも好ましくない)、機械式継手はコストが高いといったデメリットがあるようです。とはいえ、鉄筋は冷間加工が原則であるのなら、継手方法もそうでなくてはいけないことにするのが一貫していると思うのですが。
 継手の施工方法を定めた国としては、加熱による継手はしかたないけれど、継手部以外は、熱間加工して強度の弱点箇所を増やしちゃいかん、という意図なんでしょうか。

 鉄筋(鋼材)を加熱すると機械的性質が変化する機序自体について、少し調べてみたものの、素人には難しくてよくわかりません。私にもひとつだけ理解できるパターンの機序が、熱された鋼材が急激に冷えることで脆くなる(脆性化)というものです。
 その関係で、各種施工基準で基本的に禁止事項とされているのが、鉄筋の点付け溶接です。点付け溶接は、溶接箇所自体のビードが短すぎるという点でまず問題があります。ビードとは、溶接部の盛り上がり(溶接棒の溶融部分)のことで、これが短すぎると溶接箇所が急冷されるため、鉄筋の熱影響部は非常に硬く、脆くなってしまいます(ショートビードの禁止)。
 さらに、アーク溶接では、アークストライク(溶接部以外の箇所に、溶接電流のスパークが飛んでしまうこと)が起きやすいという問題もあります。アークストライクの箇所はビードがゼロで、急冷による脆性化も起きますし、母材の断面が欠けた状態にもなってしまいます。
 以前、木造建物の基礎工事段階で諸々の不具合が発覚し、建築主が、工事請負契約の解除を主張して提訴した事案を担当したことがあります。基礎の欠陥として主張した項目のひとつに、配筋工事にあたって、鉄筋交差部を結束線で固定するのではなく、アーク溶接による点付け溶接をしたユニット鉄筋が使用されたというものがありました。
 この事件は和解(調停成立)で終了しましたが、判決になっていたら、この溶接問題をきちんと瑕疵として認定してくれただろうかと、どこか気持ちに引っ掛かるものがあります。先日の「建築施工」の授業後にお聞きしたグレーな鉄筋継手談からも、そのことを思ったのでした。

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