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コラム/近況報告
掲載日: その他

タイトル熊本被災建物調査のご報告

 先週5月8日、「熊本地震による被災建物緊急電話相談会」(4月23日実施)で調査依頼をいただいた建物について、欠陥住宅ふくおかネット所属の弁護士・建築士(総勢18名)が5チームに分かれて簡易調査を行いました。
 私のいたチーム(建築士1名+弁護士2名)は、熊本市東区の2軒の建物を担当しました。どちらの建物も、主な被害は内壁クロスの亀裂や外装・外溝の一部損傷で、中~大規模地震に暴露した建物にはよく見られる現象でした。簡易調査の結果からも、建物の構造的欠陥による被害とは認められず、建築士の方からそう言ってもらうことによって居住者の方は安心されたようです。
 が、他のチームが担当した調査では、建物の損壊部分から筋交いの人為的な切断・欠き込みが確認されたケースや、造成地一帯のコンクリート擁壁がずれ落ち、擁壁際に建つ複数の建物が傾斜したケース(擁壁の基礎に問題があるかもしれないとのこと)など、建物や宅地に深刻な欠陥が疑われる例も見られたそうです。

 担当建物の調査が終わった後、益城町の被災状況を確認しました。熊本市内でも道路際にある建物の一部損壊が目立ちましたが、東区から益城町に入ると景色が一変しました。

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 役場前の通りを中心に車で通過して一見した限りでは、かなり築古に見える建物に倒壊等の重大被害が集中しているように思われ、「新耐震基準(特に平成12年の建築基準法改正後)ってけっこうすごいのかもしれない」などと思いつつ町の様子を眺めていました(中には、それなりに築古だと思われるRC造建物で、1階がいかにも危なそうなピロティ構造なのに外観は無傷に見え、応急危険度判定も「緑」の建物などもありました)。
 しかし実は、車が入れないようなところでは、2×4住宅(壁で構造耐力を確保する工法)なのに構造用合板が施工されずに損壊した建物や、主要な部材の接合に誤った溶接(隅肉溶接)が行われて破断した鉄骨造建物、原因不明ながら完全倒壊している新しい建物などが確認されているそうです。
 数々の震災を経て改正されてきた耐震規定を遵守した建物は大規模地震に対してもそれなりに安全だけれど、設計施工に手抜きがあれば当然にNGということかと思います。

  益城町の被害状況については、新建築家技術者集団福岡支部のホームページに詳しい報告があります。新建技集団と欠陥住宅ふくおかネットの双方に所属されている何名かの建築士さんが、今回の調査にも携わってくれています。

  熊本の地元紙と鹿児島のテレビ局が取材に来てくれており、翌日以降、地元紙で調査の記事を見たという方などからも、欠陥住宅ふくおかネットにぽつぽつと調査依頼の問い合わせをいただいています。
 当ネットでは、先日の調査の結果、継続フォローが必要だと思われた事案や、新たなお問合せに対応する体制づくりについて、現在協議を進めているところです。

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