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コラム/近況報告
掲載日: 敷地・地盤

タイトルGLとFLの話

 注文住宅の欠陥に関するご相談には、敷地の地盤面や、建物の床の高さに関係する問題がけっこうあります。
 例えばこんな内容です。
・建物の外観的な高さを抑えるために天井高まで低くしたのに、敷地に余計な盛土がされて、設計図書の指定以上に地盤面が上がった(その結果、建物の高さも上がってしまった)。
・豪雨時の浸水を防ぐため、既存建物より床高を上げた建物に建て替える予定だったのに、既存建物解体後に地盤が削られ、旧建物よりも新築建物の床高が下がってしまった。
・新築建物の床高を同じ敷地内の既存建物の床高に合わせたかったのに、そうなっていない。
 このように、意匠面・機能面と理由は様々ですが、敷地地盤の高さや建物の床の高さにこだわりを持つ建築主の方が意外に多いのです。
 そういうケースでは、本来、一般の建築計画以上に、地盤面(グランドライン=GL)や床仕上げ面(フロアライン=FL)の高さを厳密に設計しなければならないといえます。

 改めて確認すると、GLとは、 建物の外周と接する地面のラインのことです。建物設計において特定すべきGLには、「設計GL」や「平均GL」というものがありますが、建築計画の高さ関係で重要なのは「設計GL」の方です。設計GLとは、建物のあらゆる高さ関係の基準となるGLで、建物各所の高さ(各階の床高・天井高、軒高、建物の最高高さ等)は、設計GLを基準として設計図書に表記されます。
 つまり、地盤や床の高さが建築主の希望通りになっていないというケースでは、設計GLの設定や、設計GLに対するFLの設定が不適切だという場合が多いのです。
 そのような事態が生じる背景として、①GLやFLに関する建築主の希望が(設計施工一括請負の)施工業者の担当者に十分に伝わっていない(そのため、担当者が設計者に対して建築主の希望を伝えることができていない)、②設計者が、建築主と直接打ち合わせをしていないということが挙げられます。その結果として、建築主の希望が設計図書に反映されないことになるのです。
 なお、設計GLは、計画地付近の特定地点(マンホールや止水栓など)を基準点(ベンチマーク=BM)として、BM±●mmというように特定されるものです。ところが、設計者が工務店に名義貸しをしているだけというようなケースでは、設計者が現地確認もせず、設計図書に、計画地と隣地や道路との高低差について現実と全く異なるいいかげんな数字(いわゆる丸い数字)を記入したり、設計GLの基準となるBMの特定すらしていないということもあるのです。
 また、設計図書のGL/FL指定が適切であっても、施工や工事監理がいいかげんで、敷地の造成工事が設計図書通りに行われていないという場合もあります。

 上記のような問題が起きるのを防ぐためにまず重要なのは、建築主として重視している建築条件については、施工業者の営業担当者との口約束で済ませるのではなく、設計者と直接打ち合わせをすることです(これは、GLやFLの問題に限らずですが)。打ち合わせの際には、出席者が捺印する打ち合わせ記録を作成してもらい、こちらの控えを受け取るようにしましょう。いざ紛争になった場合、相手方は、客観的な証拠が存在しない事柄については必ず「そのような約束はしていない」と主張してきます。「言った」「言わない」の争いとなる事態は避けなければなりません。
 また、GLやFLの設定は、計画地を見ながらでないとイメージがつかみにくいため、設計者との現地協議をお勧めします。現地において、BMや現況GLの把握、BMや現況GLに対する設計GLやFLの設定、現況GLから設計GLにするための土地造成(盛土・切土)の要否といった点について、設計者ときちんと確認しておくことが望ましいです。その前提として、GLやFLの設定を重視する建築計画の場合、設計者に必ず現況GLの測量をしてもらうべきです。
 そして、工事請負契約の締結時までには、上記のように設定した設計GLやFLが、設計図書に正しく特定されていることを確認するようにしましょう。BMの位置やBMに対する設計GLの高さは配置図に、設計GLとFLや建物各所の高さの関係は立面図・断面図・矩計図等の図面に記載されているはずです。
 着工後、造成工事が終わった段階で、地盤面の仕上がりが設計GL通りとなっていることを現地で確認しておけば安心です(念を入れるのであれば、この段階でも測量を実施してもらうのがベターです)。

設計GL

 

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