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コラム/近況報告
掲載日: 敷地・地盤

タイトル擁壁がある土地を購入するとき気をつけたいこと(3)

◇既設擁壁の安全性チェック
*外観をよく観察
 法令上、擁壁の構造方法として認められているのは、①鉄筋コンクリート造(一般的な断面形状は逆T型やL型)、②無筋コンクリート造(一般的な断面形状は台形)、③石材やブロック材の練積造(石材の裏面をコンクリートで裏込めするもの)、④国土交通大臣の認定を得た構造方法です(①②は、構造計算によって安全性を確認したもの)。
 (鉄筋)コンクリート造や大臣認定擁壁を見て、一般の方が擁壁の構造方法に問題があること(構造計算結果がNGなど)を見破るというのは基本的に不可能だと思いますが、どの構造の擁壁であっても、劣化事象や、擁壁に必要な排水設備(最低限、所定の水抜き穴)の有無、多段擁壁の設置基準違反があるかなど、外観でわかる安全性に関する情報はあります。
 こうした安全性チェックは、国交省「我が家の擁壁チェックシート」や、特定行政庁が公開している建築基準法の「敷地の安全」規定・自治体の「がけ条例」の運用基準(福岡市の例)が参考になります。
 これらの運用基準は図解を交えて解説されているものが多く、一般の方にもわかりやすいと思います。擁壁全般に関する安全性チェックの詳細はそちらをご参照いただくとして、以下では、私の事件処理経験を踏まえて、石積み・ブロック積み擁壁の構造や排水のチェックポイントについてちょっと違う視点から述べてみたいと思います。

*石積み・ブロック積み擁壁の場合
 石積み・ブロック積み擁壁特有の法令技術基準をざっくり言うと、①土質に応じた勾配・高さ・下端厚さ(宅地造成等規制法施行令別表第四)、②練積み造、③所定深さの根入れです。また、全ての擁壁に共通する基準として、④壁面3㎡以内ごとに内径7.5㎝以上の水抜き穴と裏面の透水層(砂利等)、⑤滑りや沈下に対して安全な基礎を設ける必要があります。
 このうち、勾配・高さ(①)と水抜き穴(④)の設置状況は外観から簡単に確認できます。勾配・高さの制限値は、土質や勾配・高さの相関関係によって異なりますが、勾配がほぼ垂直だったり、高さが5mを超えていたりする場合はそれだけで基準違反だとわかります。
 水抜き穴は、所定の内径以上の、耐水性のある配管かどうかをチェックします。穴底をライトで照らしたり棒でつつくなどして、透水層もチェックできるとベターですが、適切な施工かどうかは、一般の方にはなかなか判断が難しいかもしれません。
 石やブロックが練積みでない(いわゆる空積み)擁壁は非常に危険ですが、石やブロックの裏側がコンクリートで固められているかどうかは、外(壁面側)から見てもわからないと思われるかもしれません。しかし、石やブロックの目地に隙があると(それ自体劣化事象です)目地部の背面土が丸見えだったり、雑草が生えていたりして、空積みであることが一目瞭然というケースもあります。 

 擁壁の壁面側からは練積み造かどうかわからないという場合、気合を入れて背面土を掘ってみると、石やブロックの控え部分(背面突起部分)が露出して、空積みであると判明したりもします。

  石の控え部分が密集する間知石(四角錐の石材)を積んだ擁壁の場合、擁壁背面をシャベルで掘るのは難しいのですが、地盤があまり固くなければ、石目地位置(石材控え部分のやや奥側)を狙って固い棒(鉄筋やピンポールなど)をハンマーで打ち込んでみると、地中の深くまで差し込んでいき、空積みがわかることもあります。

*外観での安全チェックに限界はあるけれど
 石積み・ブロック積み擁壁の技術基準違反のうちでも、高さ・勾配制限の若干の違反は、他の基準項目に違反がないのであれば、それほど危険視しなくて良いように思います(←個人的意見です)。
 これに対して、空積みや、水抜き穴・基礎の施工不良は3大危険要素と言ってよいと思います。
 このうち、基礎の施工不良を簡単に見破ることはできません。擁壁の根入れが全然足りていない状態(それ自体も施工不良)であれば別ですが、相当深く地面を掘る必要があります。そうして基礎の前面一部を露出させても、施工不良かどうかの判断は専門知識がないと難しいと思います。
 石やブロックが空積みでないかのチェックも、土地の購入を検討しているだけの段階で、擁壁の背面土を掘ってみたりなんてできるか!という突っ込みが入りそうです(その通りです。特に擁壁が隣地内に設置されている場合は、普通に考えて無理です)。
 では、外観チェックのみで、外観ではわからない擁壁の危険性を察知するのは無理でしょうか。厳密な判定は無理ですが、見えない部分に重大な欠陥がある可能性の程度はわかります。大きなポイントは、外観チェックで判断できる基準違反の有無や、土地の造成(擁壁の築造)時期です。

*外観でわかる欠陥は見えない部分の欠陥を推測させる
 私の経験上、欠陥擁壁は、技術基準の違反項目が1つだけということはなく、複数の違反が重なっているものです。外観でチェックできる水抜き穴設置状況・高さ・勾配などの基準に関しては完璧な施工がされている一方、見えない部分(コンクリートの裏込めや基礎施工など)だけ基準違反という擁壁は、なくはないのかもしれませんが、かなり珍しい存在だと思います(意図的かつ巧妙な手抜き施工といえそうです)。
 基本的に、施工業者(下請含む)の知識・技術・モラル・工事管理体制などのレベルは、建築物や工作物のあらゆる箇所に反映されるものです。擁壁の壁面に水抜き穴が一つもなかったり、石積み・ブロック積みの勾配がほぼ垂直というような施工は、それだけでも確実に危険ですが、そうした外観でわかる重大な欠陥は、見えない部分の著しい基準違反も推測させるものだといえます。外観でわかる欠陥の程度がやや軽微~中程度といった場合でも、基準違反項目が複数確認できるような場合には、やはり、見えない部分にも施工不良のある可能性が相当高いように思います。

*造成時期が古い土地は特に要注意
 比較的新しい擁壁の欠陥は、上記の通り、施工業者が低レベルという要因によります(開発業者や元請業者が工事・下請代金を安くあげようとして、ずさんな施工を誘発する面もありますが)。
 一方、現在の技術基準からすると非常に危険であっても、築造時点を基準とする限り施工が悪かったとは言えない(または言い切れない)擁壁もあります。造られた時代が古いものです。
 建築基準法すら存在しない時代に造成された土地の擁壁は、たいてい、現在の技術基準には全く合っていないと思います(擁壁築造時にはその基準がなく、当時は欠陥施工ではなかったわけです)。
 先般解決した事件の土地は、付近一帯の土地も含めて昭和1桁年台に開発されたものでした。土地四周の擁壁は、全てが間知石空積み・水抜き穴なし・高さ+勾配制限違反であり、一部の擁壁は、近接二段擁壁(二段擁壁の離隔部分が排水溝)になっているなど、現在の技術基準からすると非常に危険な欠陥施工です。

土地南側境界部の擁壁(南側隣地内)です。
すでに劣化事象(石目地部分の連続亀裂)も目立ちます。

 印象としては、昭和40年代頃までに造られた擁壁も怪しいものが多い気がします。宅地造成法規制法(現在の擁壁設置技術基準の礎的な法令)の施行前はもちろんのこと、施行から間もない時期は、技術基準が十分に普及・定着していなかったように思います。
 先に触れた間知ブロック空積み擁壁は、同法施行の頃に設置されたものです。一応水抜き穴が存在しますが、排水管が設置されておらず、穴の径も2㎝程度しかありません。勾配も垂直まではいかないものの、80°は超えています。

(続く)

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