誰にも共感されない、私の調査立会あるあるシリーズ。
・コンクリートのひび割れ幅がクラックスケールのどの目盛りと合っているのか、だんだんわからなくなってくる。
・タイル打診の音がどこから変わっているのか、若干自信がない(特に、「(浮きがひどくて)タイルが落ちるから(打診棒を)軽く転がして。叩いたらダメ。」と言われるとき)。
・依頼者様方の小屋裏や床下に目薬やボールペンを忘れ、提訴後の現地調停にて回収(決してそのために提訴しているわけではない)。
そんなことはどうでもいいのですが、先日、マンション外壁タイルの赤外線ドローン調査を見学する機会をいただきました。
タイル張りの外壁では、太陽光の輻射熱を受けたタイルから、下地・コンクリート躯体への熱伝導を生じます。
タイルと下地の間に隙間(タイルの浮き)がある箇所は、熱伝導が妨げられてタイルの蓄熱度合いが高くなるわけですが、赤外線調査は、その壁面温度が高い箇所を探索して、タイル浮きの範囲や程度を判定するものです。
今回の調査業者さんによると、壁面全体が高温になる真夏は調査に向かない(6月・10月がベストだそうです)、終日安定した晴天でないと調査精度が落ちる、風速5m/s以上だと壁面の温度が下がるため調査はできないということでした。予備日の設定が必須の調査ですね。
本物件は、最近実施した定期調査の際に、外壁全面についてゴンドラを使用したタイル打診調査を終えているそうですが、将来的なドローン調査への切り替えを検討すべく、試験的に外壁一面について同調査を行い、打診調査結果と照合してみるということです。
大規模修繕(タイル補修予定)を控えて、打診調査で著しく浮いていた下階隅角部のタイルはすでに斫り落とされています。
使用するドローンは、DJI/MAVIC2というシリーズの赤外線カメラ搭載モデルだそうです。
高層階から撮影するとのことで、いざ出陣。
太陽が眩しい。
ドローン操作の方も、機体の飛行位置を確認する方(※)も、強力そうなサングラスを装着されていました。
(※)今回は1名でしたが、現場によっては2名が望ましいそうです。
今回の現場は空港が近い関係で、機体の位置が国交省の飛行許可範囲からはみださないよう、特に神経を使われている感じでした。
ドローンのバッテリーは20分くらいしかもたないようで、交換のためにちょくちょく機体が下ろされます。
コントローラーの表示パターン(カラーパレット)はかなりバリエーションがあります。
機体の位置(高さ・撮影対象物までの水平距離)は、通常GPSによる自動表示設定だそうです。「今回の現場は空港に近いので、座標の設定は手動でナントカ・・画面の機体位置表示は若干不正確・・」というようなご説明をいただいたのですが、要所要所があまり聞き取れず;
一般にサーモグラフィ画像といえばレインボー表示のイメージですが、調査中は基本的に「ホワイトホット」選択でした。
高温箇所が白く表示されています。
浮きが激しく事前にタイルが斫り落とされていた箇所の周辺は、やはり高温になっています。
正式な調査結果は、撮影画像データを専用ソフトで分析してまとめられるそうです。
現場でのコントローラー画面表示では、タイルの浮きは高層階にはあまりなく、下層階に集中している模様でした。
ドローン調査終了後、見学会主催の建築士さん(大規模修繕の設計監理者)&見学者一同で場所を変えて、ちょっとした振り返りを行いました。
こちら↓、建築士さんが3年前に自前の赤外線カメラで地上から撮影されたサーモ画像だそうです。バルコニー手摺壁と、やはり下層階隅角部に高温箇所が目立ちます。
こちら↓は、打診調査の結果だそうです。
ドローン調査の正式な結果(報告書)待ちになるのでしょうが、感覚的には両調査の浮き範囲は概ね一致していそうに思われます。
建築士さんが以前まとめられた、タイル浮き調査に関する報告書を一部見せていただきました。
Googleストリートビュー仰角画像の経時的な比較で、タイルの浮き進行を確認できるそうです。すごい!
外壁タイルのドローン調査は、ゴンドラや足場を使用する打診調査に比べてはるかに低コストですから、今後ますます普及していくと思われます。
環境条件によって調査精度が左右されるのが一番の難点ではないかと想像しますが、そのあたり、今後のノウハウ蓄積に期待したいところです。