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タイトル土地造成の問題

質問宅地などの欠陥や不具合現象には、どのようなものがありますか?

 土地(主に宅地)に関する欠陥のご相談で最も多いのは、盛土や切土によって生じた崖に設置される擁壁の問題です。擁壁で土留めされた敷地上の建物に住む方が、擁壁際の地盤沈下、擁壁のひび割れや目地の開き、傾斜や位置のずれなどに気づいてご相談に来られるケースです。また、盛土をする際に産業廃棄物などが埋め立てられ、地盤沈下被害につながる例もあります。

 その他、地盤改良工事の施工不良による地盤沈下や、土地の化学汚染などのご相談もあります。

質問擁壁や周辺地盤の不具合現象の原因は?

 背面の地盤を支える擁壁は、転倒(敷地の反対側に倒れようとする現象)、滑動(基礎の底版が前に滑る現象)、沈下(底版が下に沈む現象)を起こさないだけの安定性が必要です。擁壁や付近の地盤に不具合が生じている場合、転倒、滑動、沈下などによって擁壁が動いていると考えられます。また、擁壁が設置された地盤が広範囲にずれを起こす「円弧滑り」や「複合滑り」によって擁壁が動くこともあります。

 擁壁の安定性に問題があるかどうかは、擁壁の形状や高さ、設置された地盤の強度などから計算によって確かめることができます。円弧滑りなどに対する安全性についても、付近の地盤の強度から検討することができます。なお、擁壁の安定性や付近の地盤には元々問題がなかったにもかかわらず、擁壁付近の土地の掘削などが行われたことが原因で、擁壁が安定性を失うこともあります。

 擁壁の施工上の問題が不具合の原因となることもあります。擁壁には水抜き穴を設置しなければいけませんが、水抜き穴が所定の間隔で設置されていなかったりすると、背面土の排水がうまくいかずに圧力が高くなり、擁壁の安定性が失われることがあります。
 擁壁の構造には、練積造、鉄筋コンクリート造、無筋コンクリート造などがありますが、間知石などを積み上げた練積擁壁に特有の問題として、石と石の間や裏側にコンクリートがきちんと充填されていない場合に、擁壁がはらみだしてくるということがあります。また、練積擁壁は勾配90°(垂直積み)とすることはできません。

 古い造成地では、ブロック塀を擁壁代わりにしている例も見受けられますが、ブロック塀は、基本的に土圧に耐えられる仕様ではありません。多くの特定行政庁は、建物の敷地をブロック塀で土留めする場合の高さや構造について制限を設けています。

質問欠陥の判断基準は?

 欠陥の内容にもよるので一概にはいえませんが、建物同様、日本建築学会編「建築工事標準仕様書・同解説/土工事および山留め工事」などの技術書が示す設計施工規定が一定の基準になるといえます。

 擁壁の場合、建築基準法令、宅地造成等規制法令、自治体や特定行政庁の定める設計施工基準(条例や建築確認の運用基準など)、日本建築学会の文献、擁壁材のメーカー設計施工基準などが挙げられます。

 なお、宅地造成等規制法令が規制するのは、「宅地造成工事規制区域」内の工事であることから、施工業者側が、区域外の工事には同法令の技術基準が適用されないと主張することがあります。
 しかし、宅地造成等規制法令は、不確定要素の大きい土地造成工事について一応安全だと考えられる技術基準を定めたものだといわれており、その基準は、区域にかかわらず守るべきものだと考えられます。また、高さ2mを超える擁壁は、宅地造成工事規制区域外であっても、同法令の技術基準に適合したものでなくてはなりません(建築基準法施行令142条・建設省告示第1449号)。

質問土地の欠陥や不具合現象について、誰にどのような責任を問えますか?いつまで請求できますか?

 建物の欠陥と同様、造成工事の発注者や土地購入者は、造成工事を行った施工業者や、設計者(造成の欠陥原因が設計にある場合)に対して不法行為責任を追及できます。

 造成工事発注者であれば、施工業者に対して瑕疵担保責任(*)を追及することもできますし、土地購入者の場合、売主に対して瑕疵担保責任や、不法行為責任(売主に落ち度がある場合)を追及することが考えられます。
(*)2020年4月1日の改正民法施行により、同日以降に締結された工事請負契約について、目的物の欠陥に関する請負人の注文主に対する責任は「契約不適合責任」となりました。

質問土地の欠陥による損害には、どのようなものがありますか?

 建物の欠陥同様、補修費用、調査費用、慰謝料、弁護士費用などが挙げられます。売買契約解除などの場合は、土地の購入額、ローン金利なども対象になります。

 さらに、土地の欠陥補修の場合、その土地上にすでに建物や工作物が建っているために、費用が跳ね上がることがあります。例えば、擁壁の解体・再築のために土地を大きく掘削する場合は、擁壁際の建物を支えるためにアンダーピニング工事が必要になり、建物居住者も転居しなければならないことがあります。

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